民法の区分所有法に基づく 管理規約では
「専有部の給排水設備は個人の所有であり、個人の責任で管理する」
と定められています。
「室内の給排水管は、各住戸の判断と費用で改修する」
と言うことです。
劣化調査により専有部の工事が必要と診断され、
「室内は個人の責任と費用で行う」とした場合、
”自室の改修工事を、拒否する所有者が出てくる”
という問題が起こってしまいます。
この場合 拒否された部屋の階下室は、
漏水の危機に長年にわたってさらされることになります。
また 事故発生時の責任や賠償請求問題も、
起こりかねません。
共同住宅として生活を共有するマンションでは好ましくなく、
管理組合ベースで解決を図りたい問題です。
管理規約の改定
国土交通省は この問題に対処すべく、平成16年
標準管理規約21条に、次の条文を加えました。
「専有部分の設備のうち、共用部分と一体となった
改修工事は、管理組合がなすことができる。」
というものです。
判例
平成12年には 専有部で起こった排水管の漏水事故
について、最高裁が管理組合に責任を課す判例が出
されました。
工事実態
施工したマンションの実態事例では、90%以上
が、専有部も同時に全室施工されています。
また 専有部工事費は、ほぼ90%以上が修繕積立
金を充当しており、施工済室には 工事費の一定額
を積立金から返却する事例もあります。
個人ではなく管理組合の権限で専有部を一括で改修することで、全ての住戸を同じタイミングで改修することが出来ます。
その為には、
「専有部の給排水設備は個人の責任で管理する」
といった管理規約を
「専有部の給排水設備は管理組合の責任で管理する」
といった内容に変更する必要があります。
専有部の給排水設備の改修を管理組合が行う事は基本的に全所有者の利益になります。
その為、給排水設備改修に入る前に管理組合総会で規約を変更することが必要となります。
管理規約の改定によって専有部の給排水設備改修も管理組合が行う為、
専有部の工事費用も長期修繕積立金から支払うように規約を変更する必要があります。
多くのマンションが専有部の改修は個人で行う事を前提にしており、もともとの積立金だと足りなくなる可能性がある為、
長期修繕積立金の積立金額の変更も必要な場合もあります。
・専有部の設備も管理組合の責任で改修
・専有部の工事費用も長期修繕積立金から支払う
・長期修繕金の金額が不足していた場合、増額
・すでに個人で工事を実施した住戸には積立金から返金
給排水設備の改修工事に関しては、法的な解釈も踏まえ難しい問題の為、専門のコンサルタントのアドバイスを受けながら進めることをお勧めします